MEEEMOO

たまには気分転換。
<< July 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

* - * * - * -
前日決戦
待ち合わせて、乗り込んだ電車の中。
目的地は5つくらい先の駅。特に話すことも見つからなくて話題を探していたら、わたしはうっかり墓穴を掘った。
「だいきとメールしてるんだ?」
「あ、うん。明日何時かって、メールきて」
思わず付け足した言葉がわたしには言い訳にしか聞こえなかったけど、知らないふりをした。だって、本当のことだし。
さみしいの?くやしいの?うらやましいの?
意地の悪いわたしは、頭のなかで問いかける。きっと、ぜんぶだ。
だいきに返信をしていたら、さこも携帯に没頭しはじめた。いつものことだ。ひとが少しでも携帯に気を取られると、負けじと携帯を弄りはじめて、しかもいつまでも戻ってこなくなるのだ。悪い癖だと思う。だってメールならまだしも、していることと言ったらネット配信のニュースやコラムを読んでいるのがほとんどで、そんなこと人といる時にすることじゃないって思うから。
「明日、何時だっけ」
「さっき言ったじゃん、あ、つくよ、降りなきゃ」
「うん、知ってる」
さこはそこでやっと携帯をとじて、こちらに帰ってきた。
何を知ってるのよって思ったけど、これもいつものことだから何も言わないことにした。
携帯に没頭しながらも車内のアナウンスを聞いていたのかもしれないし、電光掲示板をちらりと見ていたのかもしれないし、見たのは外の風景だったのかもしれないし、それは本人にしか分からない。けどわたしは、そのどれでもないって知っている。だから何を言ったって無駄なのだ。
シュー、と音をたてて開いたドアの向こうは思っていたより暖かい。今日は天気がいいから、斜めの日差しがふりそそぐホームを歩いているだけで暑いくらいだ。
「で、何時?」
「6時にあきんち」
「ふーん」
興味のなさそうな生返事に、わたしは一気に脱力した。
ズボンのポケットで携帯が震えている。だいきからだろうか。気になるけど、今手をのばしたらまたさこが戻ってこなくなってしまうから気づかなかったことにする。
「そうだ。だいき明日、野暮用で遅れるかもって」
「野暮用って?」
「知らない。ちゃんと来いってメールしたげたら?」
「いやよ面倒くさい」
「ひどいなあ」
「わたしは来ないなら来ないでいいもの、かなちゃんが送ればいいでしょ」
さみしいの?くやしいの?うらやましいの?
「やだよー」
「ひとのこと言えないじゃない」
「あはは」
だって、わたしが言っても意味がないことをわたしは知っているのだ。本当に、残念なことに。だからわたしは無言でいじわるを言うしかない。
さみしいの?くやしいの?うらやましいの?
もらっちゃうよ、なんて言ってあげられるほど、私は強くないし大きくもないし、何よりこどもだ。本当に本当に、残念だと思う。
「まあ、こないことないでしょ。誕生日祝うのに本人がいないってありえないし」
「たしかに」
「よし、何買おうか」
「なんでもいいんじゃない?だいきならなんでも喜びそう」
「よし、じゃあさこが選んでね!」
「なんでわたしが」
「いいから、よしいこ!」
これならだいきも喜ぶだろうななんて思ったら、切なくて悲しくて、でも同じくらいわくわくした。



見えてしまった内弁慶と見て見ぬふりの変わり者
* おはなし * 05:36 * comments(0) * trackbacks(0)
ルームシェア
「わたしがエリーで、あなたがマサト」
「…は?」
「あのふたり、別れるときがくるならそれはマサトに限界がきたときだねって」
「言われてたね」
「うん、結局別れちゃったけど」
「本当の理由は分からないけどね」
「そうね」
「…で?」
「え?」
「どうしてわたしがマサト?」
「わがままはわたしだから」
「わがままだからエリーなの?」
「わたしたちが別れるときはあなたがわたしを嫌になったときかなって」
「はぁ」
「だから、よろしくね」
「あぁ、うん」

同居人へのごあいさつ
* おはなし * 01:34 * comments(0) * trackbacks(0)
AM2:34
なーに?
なんでもない、なんとなく
じゃあね
ちょっと待って、ひどいな

真夜中の電話をとるのには、少しだけ勇気がいる。

「もうやめるよ」
無意味に会うのも、電話するのも
それは彼の、わるいくせ
「……なんで?」
動揺したのがばれないように、そう思ったら不自然な間があいて、だからできるだけ高いトーンで聞いた。馬鹿にしてるみたいに。
そうしたら、彼は笑った
「俺に会いたいの?」
「馬鹿じゃないの」
「ひでぇなぁ」
馬鹿じゃないの
本当に、そう思った
「もうほかの子代わりにしたりしない。俺、強くなるよ」
つよくなるよ
薄っぺらい言葉が様になるのは、彼のいいところ。
「……それは、頑張って」
「お前馬鹿にしてんだろ!」
「そんなことないよ」
電話越しの笑い声はいつもより柔らかい。
「ねむいの?」
「うん、ちょっと。時間が時間だし」
「電話なんてしてないでとっとと寝たらいいじゃない、明日早いんでしょ?」
「でも寝れなくて暇で」
「あの子に電話したらよかったのに」
「んー、お前がよかったからいいの」
「ふーん」
分かってるけど。
形だけのそれを引っ張り出して、それで喜んでいるわたしは重傷だと思う。

深夜の気まぐれに転がされるわたし。それにまったく気付かない彼。
どっちも救いようがないなって思った。
でも、嫌いじゃない。
だから間違っても口になんて出さないのだ。
失敗しちゃえばいいのに、なんて
* おはなし * 05:26 * comments(0) * trackbacks(0)
やさしいごご
「ねえ、そんなに似てる?」
「そうね」
話す間も、ぼくの髪を撫でる彼女の手は優しかった
彼女が言うには、彼女の昔の知り合いとぼくはそっくりなのだそうだ。
顔でも性格でも背丈でもなく髪の手触りが、ひどく。
「綺麗なハニーブロンドでね、蜂蜜みたいにきらきらしていて触るとつるつるで、見た目はまったく違うのにね、手触りはあなたの髪によく似てた」
嬉しそうに懐かしそうに、さっきそう教えてくれた。なんだかちょっと気に食わなかったけど、それは言わないことにした。
「ほんとうに、綺麗な髪」
「そうかな」
毛先を伝わる通り過ぎていく指の感触が気持ちよくて、暖かい枕が心地よくて、ゆるゆると眠気が襲ってくる。重たいあたまが彼女の柔らかい膝に、ゆっくりと沈んでいく。
「これで金色だったら完璧なのにな」
彼女は楽しそうに僕の髪をすくう。指先からぱらぱらとこぼれた髪が、耳にかかってくすぐったい。
「そんなにすきだったの?」
「そうね。綺麗だし、すごく気持ちいいじゃない」
「そのひとのこともすきだった?」
「そうね、すきだった」
「…ぼくも髪の毛きんいろにしようかな」
「折角綺麗なのに勿体ない。わたしとそっくりな漆黒色はいや?」
「ううん、だいすきだよ」
でもままがね、あんまり嬉しそうにに蜂蜜色のことを思ってるから。
「わたしもあなたのこと、だいすきよ」
額にかかった髪の隙間に、やさしい唇が降ってくる。
(だいすきよ)
なら、いいかな
膝も手も唇もまなざしも、全部が柔らかくて暖かくて穏やかで。そんなきらきらに包まれて、ぼくはゆっくりと、まぶたをおとした。
* おはなし * 06:32 * comments(0) * trackbacks(0)
こいごころ
唐突で思いがけない甘い匂いに、カップに近付けた顔をあげた。
それは思い描いていたものよりももっとずっと甘く、微かにすっぱい、どこかでかいだことのある香り。

なに、これ?

正体の分からないそれから白い帯のような暖かさがゆらゆらと揺らめいて、冷えきったわたしを誘う。
優しい弧を描く彼の口は何も言わないけど、これが怪しいものであることはなさそうだ。
それにきっとわたしは、目の前のこれを知っていた。思い出すことはできなくても、覚えのある香りに間違いはない。
不安と、何故か感じる小さな期待に揺れながら、わたしはもう一度、そのカップに手をのばした。
続きを読む >>
* おはなし * 15:05 * comments(0) * trackbacks(0)
はじまりのいろ
今日もまた、夕日から遠から遠ざかる。
どのくらいの距離かは分からないけど、30分、電車に揺られて。
沈む太陽と反対に進んでゆく電車は、ゆったりとしていてとても穏やか。
ピンクとみずいろ。
オレンジとあお。
ワインレッドに深いむらさき。
色は次第に濃くなって、だけど天辺の白は何にも侵されることなく、闇に落ちていく。
冬の夕方は刹那。
太陽から遠ざかっているのだから、それはさらなり。
電車を降りるころには、あたりはふかい、ふかい紺。
家に向かって歩く途中、東のほうにひらけた道のその奥に浮かぶ、
燃えるような深い赤。
それは冬の日の夜の、はじまりのいろ。
* おはなし * 18:22 * comments(0) * trackbacks(0)
シュガーシュガー
グラスの底でゆらゆら揺れる、透明のもやもや。
混ぜても混ぜても揺らめくそれは、わたしの心の冷静を奪ってゆく。

「で、どうなの??」

湯気ののぼるカップを両手で包むようにしながら、いたずらっぽい瞳を上目気味に向けてくる彼女は悲しくなるほどに無邪気で、

「そう言われてもね」

そう答える他には、私にはどうする術もなかった。

もやもや、もやもや。

「少し気になる人、とかでもいいんだよ?」

思考が霞んで、鈍い頭痛がする。
効きすぎた暖房のせいか、摂りすぎた糖分のせいか、それとも、

「どうしてそんなことを聞くの?」

どうして?
何 が、どうして?

全部、分かってしまっているのに?


グラスの中のストローを、くるくるとゆっくりまわす。
溶けて小さくなった氷の微かな音の下には、やっぱりもやもやが、浮かんで揺れていた。





(どうしようもない)
* おはなし * 04:48 * comments(0) * trackbacks(0)
ホットミルク
こうすると体が温まってよく寝られる気がするから。そう思ってはじめた、冬限定の、布団に入る前の日課。
お気に入りのマグカップに、いっぱいのミルクを注ぐ。
部屋の空気も充分過ぎるくらいに冷たいけど、やっぱり冷蔵庫の中には敵わないみたい。長い間その中で冷やされたミルクの温度はカップを伝って、わたしの両手から感覚を奪っていった。
カップを片手にパックをしまって、レンジに手を伸ばす。と、
「それ、ちょうだい」
ふっと。感覚のなくなった左手から、重さが消える。
目線をあげるとわたしの手を離れたカップは、ゆれるのどの上に傾いて。
「ちょっと亮太」
飲みたいんなら自分で注ぎなさいよ と、白いカップで隠れた顔に向けたのは、ため息まじりの文句。
「いいじゃんこれくらい。俺これでも受験生だし、少しでも時間は惜しいわけよ」
空になったカップを受け取りながら見上げた亮太―いつの間にこんなに目線が遠くなったんだろう、なんだか悔しい―は、少し眠そうな顔をしていた。
「最近ろくに寝てないでしょ。そんなに根詰めなくてもいいんじゃないの?」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
あと少しだし今くらい頑張んなきゃ そう言って笑って見せたけど、やっぱり疲れてるんだろうな。細くなった目の下が、少しだけくぼんで見えた。
「・・・まだ寝ないの?」
「うーん、あとちょっとかな。じゃ、おやすみ」
そう言って見せた背中に、がんばってねってつなげようとしたけど、柄にもないからやっぱりやめた。


熱を取り戻しはじめた両手で包んでいたせいでぬるくなったカップの上に、冷たい中から再び取り出したパックを傾けながら思いついたのは、わたしにしてはめずらしい名案。
後で亮太に、ミルクを持っていってあげよう。
今度はちゃんと温めて、はちみつなんかをたっぷり入れたやつ。もちろん良太のカップにね。
それで今日は、早く寝ちゃえばいい。
がんばって なんかよりもこっちの方がずっとわたしらしいし、すてきなことだと思うから。
続きを読む >>
* おはなし * 01:43 * comments(0) * trackbacks(0)
やさしいひと
「なんでそうゆうこと言うんだよ」
突然機嫌が悪いときや怒っているときと同じ低い声でそう言われて 心臓が跳ね上がった。今の今まで笑っていた彼だったから、その変化が余計に重くて息苦しくて、 彼の目を見れなくなった。

わたしはわたしがあまり好きではないから
わたしはわたしをけなしてしまうのが癖で、
そんなことわたしにとっては、当たり前のことだった。
だけど彼はそれが嫌いで、
そんなわたしを怒ってくれた。
優しい人だった。
 
「・・・ごめんなさい」
怖い顔をしたままの彼の目を、恐る恐る見つめる。
そうして、絞りだすようにしてやっと言えた、このひとこと。
「・・・おれに謝ったって仕方ないでしょ」
彼は大きな手で、わたしの頭をかき混ぜた。
「もうやめろよ、そういうの」
黙ったままうなずくと、彼は満足そうに微笑んだ。

優しい、優しい
わたしの、大好きな人。
続きを読む >>
* おはなし * 01:39 * comments(0) * trackbacks(0)
オレンジ
「どうすれば良いと思う?」
じっとにらんでいた携帯電話をゆっくり、未練たらしくテーブルへ置いて、木田は今日だけでもう7回目になるその言葉を吐いた。
「そんなこと言われても」
ため息をかみ殺して、ストローを口に運ぶ。駅の近くのファーストフード。木田のおごりでポテトと一緒に頼んだオレンジジュースは果汁100%で、ひどく甘ったるかった。
「返事は?」
「ううん、全然。やっぱりまだ怒ってんだよあいつ」
そう言って盛大にため息をつくと、木田は勢いよくテーブルに突っ伏した。
「本当、どうすりゃいいのかなー」
いつも強気な木田の声が珍しく弱々しく聞こえたのは、机に突っ伏したまま話しているからなのかもしれない。
「だからさ、そういうのは自分で考えないと」
そう。本当に彼女と仲直りしたいって言うんなら、それは自分で考えないといけないんだよ。わたしなんかと、こんなところでジュース飲んでる場合じゃないんだ。
「リカのけちー」
「けちじゃない」
ぴしゃりと言うと、木田がしおれた。まったく、こんな話を聞いてあげてるわたしの身にもなってほしいっていうのに。
うなだれた木田にかける言葉なんてわたしには思いつきそうにもなかったから、苦し紛れに窓の外に目をやった。
2人掛けのテーブルを一つ挟んだ、ガラスの向こう。どうしてかカップルばかりに目が行って、素直にうらやましいなって思った。それと同時に、こうやって向かい合ってるわたしたちも、あっち側から見たらそういう風に見えるのかな、なんて思えて、自然と頬が緩んだ。ああ わたし、馬鹿みたい。

「分かってはいるよ?こんなこと自分でどうにかしなきゃいけないってことくらい自分でも。でもさ、もう分かんないんだ」
だけど現実はそう甘くはなくて、木田とわたしはただの友達。木田には彼女がいて、今わたしはその彼女についての相談を受けている。
ゆっくり顔を上げた木田は、ひどい顔をしていた。見ているこっちが痛くなるような顔。
木田のこんな顔を見るのは初めてで、わたしはやっぱり、何の言葉も思いつかなかった。
「ごめんな、こんな話聞いてもらって。やっぱりもう少し自分で考えてみるよ」
だけど、痛くて痛くて、もう見ていられなくなって。
「そんなに辛いんだったら、もうやめなよ」
気づいた時には声になっていた、わたしの言葉。馬鹿みたいに震えていて、怒っているように聞こえたかもしれない。冗談を言うときみたいに笑って言ったつもりだったけど、笑えるはずなんてなかった。
「やめちゃえばいいじゃない」
あたしのものになって、なんて言わないから。でもお願いだから、そんなに悲しそうな顔しないでよ。

ふわっ と。
木田が笑ってくれた。悲しそうな色が消えることはなかったけど、それでも、笑ってくれた。
わたしの大好きな、だけどわたしのものになってはくれない、優しい顔。
「…ありがと、リカ」
そのたった一言の中に、たくさんの意味が込められている気がした。

つんとした喉の奥に、オレンジジュースを流し込む。
甘ったるいあとのじんわりとした苦味が、なんだかすごく、痛かった。

* おはなし * 01:37 * comments(0) * trackbacks(0)
1/2 pages>>
qrcode