MEEEMOO

たまには気分転換。
<< November 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
<< あめのうた * main * やさしいひと >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

* - * * - * -
オレンジ
「どうすれば良いと思う?」
じっとにらんでいた携帯電話をゆっくり、未練たらしくテーブルへ置いて、木田は今日だけでもう7回目になるその言葉を吐いた。
「そんなこと言われても」
ため息をかみ殺して、ストローを口に運ぶ。駅の近くのファーストフード。木田のおごりでポテトと一緒に頼んだオレンジジュースは果汁100%で、ひどく甘ったるかった。
「返事は?」
「ううん、全然。やっぱりまだ怒ってんだよあいつ」
そう言って盛大にため息をつくと、木田は勢いよくテーブルに突っ伏した。
「本当、どうすりゃいいのかなー」
いつも強気な木田の声が珍しく弱々しく聞こえたのは、机に突っ伏したまま話しているからなのかもしれない。
「だからさ、そういうのは自分で考えないと」
そう。本当に彼女と仲直りしたいって言うんなら、それは自分で考えないといけないんだよ。わたしなんかと、こんなところでジュース飲んでる場合じゃないんだ。
「リカのけちー」
「けちじゃない」
ぴしゃりと言うと、木田がしおれた。まったく、こんな話を聞いてあげてるわたしの身にもなってほしいっていうのに。
うなだれた木田にかける言葉なんてわたしには思いつきそうにもなかったから、苦し紛れに窓の外に目をやった。
2人掛けのテーブルを一つ挟んだ、ガラスの向こう。どうしてかカップルばかりに目が行って、素直にうらやましいなって思った。それと同時に、こうやって向かい合ってるわたしたちも、あっち側から見たらそういう風に見えるのかな、なんて思えて、自然と頬が緩んだ。ああ わたし、馬鹿みたい。

「分かってはいるよ?こんなこと自分でどうにかしなきゃいけないってことくらい自分でも。でもさ、もう分かんないんだ」
だけど現実はそう甘くはなくて、木田とわたしはただの友達。木田には彼女がいて、今わたしはその彼女についての相談を受けている。
ゆっくり顔を上げた木田は、ひどい顔をしていた。見ているこっちが痛くなるような顔。
木田のこんな顔を見るのは初めてで、わたしはやっぱり、何の言葉も思いつかなかった。
「ごめんな、こんな話聞いてもらって。やっぱりもう少し自分で考えてみるよ」
だけど、痛くて痛くて、もう見ていられなくなって。
「そんなに辛いんだったら、もうやめなよ」
気づいた時には声になっていた、わたしの言葉。馬鹿みたいに震えていて、怒っているように聞こえたかもしれない。冗談を言うときみたいに笑って言ったつもりだったけど、笑えるはずなんてなかった。
「やめちゃえばいいじゃない」
あたしのものになって、なんて言わないから。でもお願いだから、そんなに悲しそうな顔しないでよ。

ふわっ と。
木田が笑ってくれた。悲しそうな色が消えることはなかったけど、それでも、笑ってくれた。
わたしの大好きな、だけどわたしのものになってはくれない、優しい顔。
「…ありがと、リカ」
そのたった一言の中に、たくさんの意味が込められている気がした。

つんとした喉の奥に、オレンジジュースを流し込む。
甘ったるいあとのじんわりとした苦味が、なんだかすごく、痛かった。

* おはなし * 01:37 * comments(0) * trackbacks(0)
スポンサーサイト
* - * 01:37 * - * -
comment area
comment









trackback url
http://ta-che.jugem.jp/trackback/21
trackback
qrcode