MEEEMOO

たまには気分転換。
<< September 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

* - * * - * -
あめのうた
とつぜんの大雨。
当然傘なんて持っていなかったわたしは、大粒の雨にうたれた。どんよりと暗い空を見上げたわたしを、冷たい雨粒が打ちつける。その勢いに耐えられなくてゆっくりと目をつむると、雨に混じってあたたかいものが頬に落ちた。
色とりどりの傘。
道を行く、たくさんの人たち。
流れには乗りたくなかったから、わたしはひとり、小さな路地へと足を進めた。こんなわたしのことを、気にとめる人なんていないと思っていた。雨以外のもので濡れた頬なんかには、誰も気づかないと思った。気づいて欲しくなかった。それなのに、
「山口!」
振り向くと、意外な顔がそこにあった。愛しい愛しい、今 一番会いたくない人。
「何泣いてんだよ」
泣いてなんかないよ?雨で濡れただけ。
わたしがそう言うと浅井くんは、何も言わずにさしていたビニール傘を差し出した。
「使えよ」
浅井くんは、わたしに傘を押し付けるかのようにしてそう言った。
駄目だよ、浅井くんが濡れちゃうでしょう?
わたしは傘を押し返す。
「おれはいいんだよ」
怒鳴るように言ってから、小さく、息を吐いた。
「山口が濡れてんの黙って見てらんないし」
いつの間にか彼の顔には、滅多に見せてくれない、優しい、わたしの大好きな色が浮かんでいて。
ずるい。そんな顔をされたら、傘、受け取るしかないじゃない。
ゆっくり、手を伸ばす。傘を受け取ろうと思って。だけど、
「ちょ…っ!」
わたしが手を伸ばしたのは傘の柄ではなくて、それを掴む浅井くんの右手。
手首のあたりを掴んで引っ張るようにして、そうして近づいた浅井くんに、キスをしてやった。
ずるいんだもん、浅井くん。普段は口が悪くて無愛想なふりしてるくせに、本当はすごく優しいんだから。
時折見せてくれるその優しさが、わたしに向けられるべきものじゃないなんて痛いほど分かってる。でもだからこそ、素直に傘を受け取るのは悔しかった。
わたしが彼を強くを引っ張ったせいか、彼がわたしの不意な行動に驚いたせいか、傘は浅井くんの手を離れてふわりと宙を舞った。その後になんの音も聞こえなかったのはきっと、雨がさっきよりも強くなったせいだ。



…好きだよ、大好きだった。
止まった時間を先に動かしたのはわたし。掴んだ腕はそのままに彼から離れて、にっこり笑って言った。
「…そっか、ありがと」
少しの沈黙の後の言葉は、落ちてくる雨みたいな音でわたしに響いた。
浅井くんはきっと、知っていた。わたしが彼を好きだったってこと。
でもやっぱり、浅井くんは知っているはずがないんだよ。わたしがどれだけ浅井くんを好きだったかなんて。
でも別にね、今更この気持ちに気づいてほしいなんて思わない。
同じ失恋なら、”軽い気持ちのほうが楽に決まってる”。
だから、このままでいいんだよ。
わたしは辛くなんかない。わたしの浅井くんへの気持ちは、その程度のものだったんだから。
浅井くんには、そう思っていてほしい。
わたしも、そう思っていたい。
誰も、辛い思いをする必要はないんだから。


じゃあ、またね。
掴んでいた手を離して、もう一度笑って見せた。

今度はいっぱいの、ありがとうをこめて。
* おはなし * 01:19 * comments(0) * trackbacks(0)
くろの願掛け
こころにひとつ、決めていたこと
「うわ、どうしたの花穂?!」
ずっと、願い続けていたこと
「すごーい、ばっさりいったね」
この日が来ることをずっと、
「きれーだったのにもったいないねぇ」
願っていたのに
「でも、その髪型もすごく似合ってる!」
ありがとう、そう言って笑う新しいようでそれでも変わることのない笑顔が痛くて仕方なくて、
「失恋でもしたー?」
想いを口にすること以前に、
(まさか、と笑うその笑顔に、)
向き合うことすら、できなかったんだ



(これっぽっちの勇気すらおれにはないのか、と。)
* おはなし * 00:58 * comments(0) * trackbacks(0)
攻防戦
ママの『いかないの?』は、否定することが前提だから、その言葉自体にはほとんどまったく意味がない。
そんなこと、とうの昔に知っているはずなのに、それなのにわたしは、その響きを聞くたびに期待をしてしまう。
わずかな期待は刹那の沈黙のあいだに大きく大きく膨らんで、わたしにはもう、一つの選択肢しか見えなくなる。
『行かなくてもいいの?』
不満と歓喜がまじって、プラスマイナス0になる。
感情のこもらない言葉は、吐き出した瞬間行き場を失う。
結果は予想通り。
『何馬鹿なこと言ってるの』
わたしはあなたの質問に思ったままに答えただけなのに、なんて不条理なのでしょう。
* おはなし * 03:35 * comments(0) * trackbacks(0)
よあけ
徹夜明け、お風呂上がり
頭の使い過ぎと寝不足とでぼろぼろだろうと思ってた、わたしの顔
でも思ったよりも、鏡の向こうのわたしはずっときれいだった

眼鏡をかける

ぼやけた幻想は、一瞬にして現実にうちけされた
荒れて、くすんで、ぼろぼろになったわたしの顔
たまには現実も、少しくらい予想を裏切ってくれればいいのに
湯気でくもったレンズをなでて、ぼろぼろのままなわたしの一日が、また始まる。
* おはなし * 03:20 * comments(0) * trackbacks(0)
アイスボックス
ひやり
絡めとった舌は冷たくて、それから微かにレモンの香り。
「おしい、グレープフルーツでした」

あたためて、なんて言って近寄ってきた顔。舌を暖めるなんて聞いた事ない。
「そんな顔しないで」
不満なんじゃなくて、少し驚いただけ。肺に残っていた空気と一緒にこぼれたのは、ちいさな笑いと頬のゆるみ。

ああもう、きみにはかなわない。
* おはなし * 03:07 * comments(0) * trackbacks(0)
<<2/2 pages
qrcode